ケンケンラボ

現役病院薬剤師が身近な病気や感染症、薬、健康食品、日常生活の中で疑問に思った事や勉強した事の中で役立つ情報を発信していくブログです。

【1円もムダにしない】医療費の賢い節約方法

目次

  1. まずはこれ!医療費節約の基本
  2. 外来受診時の節約方法
  3. 入院時の医療費も節約できる
  4. 医療費控除で払いすぎた税金を還付する
  5. まとめ

 

1.まずはこれ!医療費節約の基本

保険証を忘れずに

病院やクリニックへ行く時にうっかり健康保険証を忘れると、その時点で保険が効かなくなり、医療費を全額(10割)支払わなければならないこともあります。

もちろん、後から保険者に請求すれば、保険適用分(「3割負担」の人であれば7割)は戻ってきますが、一時的な負担を少なくするためにも保険証は必ず持参しましょう。

 

かかりつけ医を持つ

診療所などへ行くと「かかりつけ医を持ちましょう」というポスターをよく目にすると思います。かかりつけ医を持つことのメリットは一体何でしょうか。

例えば、同じ医師が自分の健康状態を継続的に診てくれるため、変化に気づいてもらえることや、適切なアドバイスが受けられることがあります。

また、大病院にかかる場合には、かかりつけ医などで紹介状を出してもらえると、特別料金を支払う必要がなくなり、節約につながるメリットがあります。

 

薬局もひとつに絞る

薬局をひとつに絞るメリットは、複数の医療機関から同じ薬が処方されていることに気づいてもらえることです。薬の重複を防ぎ無駄が省けます。

 

お薬手帳を持参する

薬局に行く際は「お薬手帳」を持参するようにしましょう。薬局で薬を調剤してもらう際には、「薬剤服用歴管理指導料」がかかるのですが、お薬手帳を持参するとこの料金が少しだけ安くなるからです。

その薬局にはじめて行く場合や手帳を忘れた場合は530円、これが3割負担なら160円になります。しかし手帳を持って行けば410円。3割負担なら120円となり、40円の節約となるのです。

 

2.外来受診時の節約方法

紹介状なしで大病院に行かない

紹介状を持たないで大病院を受診すると、特別料金がかかるので気をつけましょう。もともと一般病床を200床以上持つ病院に紹介状がないまま受診すると、初診時に特別料金として一定の料金を上乗せできるようになっています。

特別料金を加算するかどうかは医療機関が独自で決めて良いことになっており、料金は平均で2000円ほど。中には8000円程度加算するところもあります。

高度な医療を提供する特定機能病院と400床以上の大病院では、特別料金の徴収が義務づけられています。

そのため、紹介状なしで受診すると、初診の場合で5000円以上(歯科は3000円以上)、再診時は2500円以上(歯科は1500円以上)払う必要があります。

このように、大病院を受診する際は、かかりつけ医で紹介状を発行してもらい持参する方が節約につながるのです。

 

診療時間外の受診は避ける

診療時間外に医療機関へ受診すると、時間外加算が適用となり医療費が割り増しされます。時間外加算は「時間外」「休日」「深夜」の3種類があり、初診・再診で加算額が異なります。

やむを得ない場合を除いて、できる限り診療時間内に受診するようにしましょう。

時間外加算

平日:6時~8時、18時~22時、土曜日:6時~8時、12時~22時

初診850円 再診650円

休日加算(日曜、祝日、年末年始)

初診2500円 再診1900円

深夜加算(22時~6時)

初診4800円 再診4200円

夜間・早朝等加算(診療所のみ)18時~8時、土曜日は正午~8時

初診・再診500円(診療時間内でも加算)

※上記のうちいずれかひとつが適用(重複して適用されることはない)

 

予防接種や人間ドックにも補助がある

予防接種費用の助成制度は、自治体や勤務先の健康保険組合などで設けているところがあります。予防接種を受ける前に、それぞれの窓口に確認することをおすすめします。

中でも高齢者のインフルエンザ予防接種費用を助成している自治体は多く、また最近は大人の風疹の予防接種費用を助成するところが増えているようです。

助成金の手続き方法は自治体ごとに異なり、予防接種を受けたい人は「協力医療機関に直接行って手続きする」ところや、「予防接種の領収書を自治体に提出し、後から助成金が振り込まれる」ところなどさまざまです。

会社員などは、勤務先の健康保険組合でインフルエンザ予防接種の助成金を出しているところもあります。

そのほかに、費用が高額になりがちな人間ドックにも、助成金が支給されるケースがあります。

会社員であれば、勤務先の健康保険組合補助金制度、また、国民健康保険でも、一部の自治体で人間ドックの助成事業を行っているところがあります。

それぞれ、助成を受けられる年齢や金額に違いがあるため、窓口に確認してみましょう。

 

ジェネリック医薬品に切り替える

ジェネリック医薬品後発医薬品)は、新薬(先発医薬品)の特許が切れた後に、他の医薬品メーカーが新薬と同じ成分で作った同等の効果がある薬のことです。

薬の開発や宣伝費のコストがかかっていない分、価格が新薬の5割程度となっているため、ジェネリック医薬品を利用すると家計への負担がだいぶ少なくなります。

 

スイッチOTC医薬品

 スイッチOTC医薬品とは、もともと医師の処方が必要な医療用医薬品が、薬局などで購入できるよう転用された一部の医薬品を指します。

スイッチOTC医薬品を購入すると、一定額を所得から控除できる税制(スイッチOTC薬控除)があります。

控除を受けるための要件については、後述の「セルフメディケーション税制(スイッチOTC薬控除)」を参照してください。

 

3.入院時の医療費も節約できる

「高額療養費制度」で医療費の負担を軽減

入院費用が高額になった際に経済的な助けとなるのが高額療養費制度です。

医療機関の窓口での支払いが一定の金額(自己負担限度額)を超えると、その超えた分が後から払い戻される制度です。

ただし一時的とはいえ、高額な費用を立て替えるのは負担が大きいものです。

その際は「限度額認定証」を保険証とともに病院の窓口へ提示しましょう。医療費の支払いが1か月あたりの自己負担限度額までとなります。

 

〈70歳未満の自己負担限度額〉平成27年1月より

毎月の上限額は、加入者が70歳以上かどうかや、所得水準によって下記のように分けられます。

 

適用区分:【年収約1160万円~】健保:標報83万円以上 国保:旧ただし書き所得901万円超

ひと月の上限額(世帯ごと)

252600円+(医療費-842000円)×1%

適用区分:【年収約770~1160万円】健保:標報53万円~79万円 国保:旧ただし書き所得600~901万円

ひと月の上限額(世帯ごと)

167400円+(医療費-558000円)×1%

適用区分:【年収約370~770万円】健保:標報28万円~50万円 国保:旧ただし書き所得210~600万円

ひと月の上限額(世帯ごと)

80100円+(医療費-267000円)×1%

適用区分:【~370万円】健保:標報26万円以下 国保:旧ただし書き所得210万円以下

ひと月の上限額(世帯ごと)

57600円

適用区分:住民税非課税者

ひと月の上限額(世帯ごと)

35400円

 

限度額適用認定証は事前に用意しておく

「限度額適用認定証」は、70歳未満であれば加入している健康保険に申請して作ることができます。

70歳以上は、原則医療機関の窓口で自己負担額を超えた分の支払いを求められませんが、住民税が非課税の場合は「限度額適用・標準負担額認定証」を、年収370万円から約1160万円に該当すると「限度額適用認定証」を提示する必要があります。

限度額適用認定証は市町村の窓口で発行してもらえます。

 

4.医療費控除で払いすぎた税金を還付する

おぼえておきたい「医療費控除」

年間で支払った医療費が一定の額を超えると、所得から差し引くことができます。これが医療費控除です。

会社員が医療費控除を受けるためには、確定申告をする必要があります。

 支払った医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%)を超えた金額が医療費控除の対象となります。

 

医療費控除の計算式

(年間で払った医療費の総額-保険金などで補填された金額※1)-10万円※2=医療費控除額(最高200万円)

※1:生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など

※2:その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額

 

医療費控除「対象になるもの・ならないもの」

医療費控除を受ける際のポイントは、対象になるものとならないものを知っておくことです。

以下に主なものを挙げてみましたが、迷った場合は税務署に確認しましょう。

 

控除の対象に含まれる主な例

・通院費

・医師等の送迎費

・入院時の部屋代や食事代

・医療用器具の購入やレンタル費用

・松葉づえ、義足、義手、義歯や補聴器等の購入費用

・6か月以上の寝たきりの人のおむつ代で、医師発行の証明書があるもの

介護保険制度のもとで提供される一定の施設、居宅サービス等の対価

・かぜ薬などの一般的な医薬品の購入費用

・医師の処方箋のある医薬品の購入費用

・急な入院のための費用

・通院や入院のための交通費

・公共の交通機関での移動が困難なときのタクシー代

 

控除の対象に含まれない主な例

・美容整形の費用

・健康診断、人間ドックの費用

・タクシー代(公共交通機関が利用できない場合を除く)

・自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車料金

・治療を受けるために直接必要としない近視や遠視のための眼鏡等の購入費用

・親族に支払う療養上の世話の対価

・疾病の予防または健康増進のために供されるものの購入費用(疾病を予防するための予防接種を含む)

・親族などへの謝礼

・入院に伴う、入院に際し寝巻きや洗面具などの身の回り品

 ・自分で希望して個室に入院したときの差額ベッドの料金

 

セルフメディケーション税制(スイッチOTC薬控除)とは

先述の「スイッチOTC医薬品」を1年間で一定金額以上購入すると、所得控除を適用できる仕組みがあります。これをセルフメディケーション税制と言い、2021年12月31日までの時限措置となります。

セルフメディケーション税制で控除できる額は、実際に支払ったスイッチOTC医薬品等の購入費合計額(保険金などで補填される部分を除く)から1万2000円を差し引いた金額となり、最高8万8000円までです。

 

「医療費控除」と「セルフメディケーション税制」はどちらを選ぶべき?

セルフメディケーション税制は医療費控除の特例であり、併用はできずいずれか一方を選ぶことになります。

どちらを使った方が有利になるかについて考えると、1万2000円から10万円まではセルフメディケーション税制。

10万円から18万8000円までは、所得控除額を計算してみて有利な方を選び、18万8000円より上は医療費控除の方が有利と言えます。

 

5.まとめ

今まで「健康のために」と医療費を際限なく使っていたことはありませんか。今回ご紹介したように、医療費はちょっとした心がけや習慣で、節約することができるのです。小さな積み重ねが大きな効果を生むことになります。まずは、「かかりつけ医をもつ」「薬局を一つに絞る」「お薬手帳を持参する」など基本的な部分から心がけてみましょう。