ケンケンラボ

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高齢者の脱水症状に要注意!予防と原因、正しい予防と対処法

体内の水分量が不足したときに起こる「脱水症」は、食事や水分の摂取量が減りがちな高齢者が気をつけたい症状の一つです。本人も周囲も気づかないまま脱水状態に陥ることを「かくれ脱水」といい、この段階で正しい処置を施さないと、重症化して命にかかわることがあります。脱水症のリスクが高くなると夏場だけでなく、常に高齢者が水分を摂りやすい環境を整え、脱水に陥らないように予防することが大切です。

今回は、現在介護に携わっている人、これから介護を始める人のために、高齢者の脱水症のサイン、応急処置と予防法についてご紹介します。

 

目次

  1. 高齢者によく見られる「脱水症」とは
  2. 高齢者が脱水症に陥りやすい理由
  3. こんな症状が現れたら注意!脱水症のサイン
  4. 脱水症の症状が見られたときの応急処置
  5. 普段からできる脱水症の予防法
  6. 高齢者の脱水症を防ぐには、周囲のサポートが不可欠

 

1.高齢者によく見られる「脱水症」とは

脱水症とは具体的にどのような状態で、どんな危険性があるのでしょうか。まずは脱水症の基本的な知識をお伝えします。

 

脱水症とは

体の機能を保持するために重要な役割を担っている体液は、人間の体の約6割(高齢者の場合は約5割)を占めているとされ、血液・リンパ液・消化液などから構成されています。体液は、体外に出ていく水分量・塩分量と、体内に補給する水分量・塩分量が同じくらいのときに、ちょうど良いバランスを保てています。しかし、大量に汗をかいたり、発熱や下痢などの体調不良で水分が失われたりすることで、体内に必要な水分量と塩分量が十分でなくなる場合があります。そうした状態が脱水症です。

 

脱水症の危険性

体液には、呼吸によって取り込んだ酸素や食物などから得た栄養素を体中に届ける働きがありますが、脱水症に陥っている場合は、この機能がしっかり果たされません。そのため、軽度の脱水を放置しておくと、血管や内臓、脳などを正常に動かすために必要な酸素や栄養素が行き渡らず、思わぬ病気につながるおそれがあります。早めに適切な処置を施さないと、命にかかわることもあります。

また、脱水症は糖尿病や排尿障害などの病気の予兆である可能性もあるので、症状が進行しないうちに気づくことが重要です。

 

2.齢者が脱水症に陥りやすい理由

脱水症は、年齢を問わず誰でもなってしまう可能性がありますが、特に高齢者が脱水症に陥りやすいのには高齢者特有の理由があります。

 

体内の水分量が減っている

加齢に伴い食欲の減退や食べ物を飲み込む嚥下機能に障害が生じると水分の摂取量が減っていきます。また、筋力の低下により、体液を多く蓄積する筋肉の量が落ちることも、体内の水分量が減ってしまう原因です。

 

内臓の働きが低下している

加齢とともに低下する内臓の働きも、脱水症を引き起こす要因です。特に、体内の水分量をコントロールする腎臓の働きが低下すると、塩分濃度を適正に調節できなくなり、脱水症に陥るリスクが高まります。

 

のどの渇きに気づきにくい

高齢者は、感覚機能が低下しているため、自分でのどが渇いていることに気づかないことがあります。認知症の症状が出ている人は特にその傾向が強く、自分が飲み物を飲んだかどうかを忘れてしまい、長時間水分を摂取しないままという場合もあります。さらに認知症の症状が進んでいる人は、飲み物という概念そのものを忘れてしまっている可能性も考えられます。

 

病気や排泄障害がある

排尿が過剰になる病気を患っていると、脱水症を引き起こすリスクが高まります。例えば、糖尿病の患者の場合、増えすぎた糖を排泄しようと尿がたくさん排泄されるため、体内の水分量が不足することにつながります。同様に、頻尿など、排尿の量が増えるような排泄障害あるケースでも、必要な水分まで体外に排泄されてしまい、脱水症に陥りやすくなります。

 

薬を服用している

高齢者は血圧が高くなる傾向にあり、日常的に血圧を下げる降圧薬を服用している人は少なくないでしょう。降圧薬の中には、尿の排出を促して塩分を体外に出すために利尿作用を含んでいるものがあり、これも脱水症の一因になります。