ケンケンラボ

現役病院薬剤師が身近な病気や感染症、薬、健康食品、日常生活の中で疑問に思った事や勉強した事の中で役立つ情報を発信していくブログです。

腰部脊柱管狭窄症について解説します。

症状

この病気では長い距離を続けて歩くことができません。

もっとも特徴的な症状は歩行と休息を繰り返す間歇性跛行(かんけつせいはこう)です。

腰部脊柱管狭窄症では腰痛はあまり強くなく、安静にしている時にはほとんど症状はありませんが、背筋を伸ばして立っていたり歩いたりすると、ふとももや膝から下にしびれや痛みが出て歩きづらくなります。しかし、すこし前かがみになったり腰かけたりするとしびれや痛みは軽減されます。

進行すると下肢の力が落ちたり、肛門周囲のほてりや尿の出がわるくなったり、逆に尿が漏れる事もあります。

 

原因と病態

加齢、労働、あるいは背骨の病気による影響で変形した椎間板と、背骨や椎間関節から突出した骨などにより神経が圧迫されます。

脊柱管は背骨、椎間板、関節、黄色靭帯などで囲まれた脊髄の神経が通るトンネルです。年をとると背骨が変形したり、椎間板が膨らんだり、黄色靭帯が厚くなって神経の通る脊柱管が狭くなって(狭窄)、それによって神経が圧迫を受け、神経の血流が低下して脊柱管狭窄症が発症します。椎間板ヘルニアに比べ中高年に発症することが多いようです。また背骨を後ろに反らすと脊柱管が狭くなり、前に曲げると広がるので、間歇性跛行が起こるのです。

 

診断

 単純X線(レントゲン)写真である程度は推測できますが、より詳しく診断するためにはMRIや脊髄造影などの検査が必要となります。下肢の動脈がつまって血行障害を生じた時にも似たような症状がおこりますので原因を正確に調べることが必要です。

 

予防と治療

日常生活上の注意

日常生活で姿勢を正しく保つ事が必要です。

神経の圧迫は腰をまっすぐに伸ばして立つと強くなり、前かがみになるとやわらぎますので、歩く時には杖をついたりシルバーカーを押して腰を少しかがめるようにしましょう。そうすると楽に歩けます。また自転車こぎも痛みが起こりにくいのでよい運動になります。

 

治療

手術ではない治療としてはリハビリテーション、コルセット、神経ブロックや脊髄の神経の血行をよくする薬などがあります。これらで症状が改善することもあります。しかし、歩行障害が進行し、日常生活に支障が出てくる場合には手術を行うこともあります。また両足に症状が出ている場合には改善することが少ないので手術を行う場合が多いわけです。最近は内視鏡を使った低侵襲手術も行われています。

腰痛の原因と対処法について解説します。

腰痛は人が4本足の動物から進化し、2本歩行になった時から始まったとされ、人間の宿命といわれています。地面に垂直に立った人の背骨は、重たい頭や胴体など上半身にかかかる重力のすべてを支えなければなりません。立っているだけでも腰に負担がかかるのに、少し前屈の姿勢をとったり重い物を持ったりするとさらに負担が大きくなります。このように常に重力にさらされている背骨が悲鳴をあげた状態が腰痛です。

 

腰痛のメカニズム

背骨は一本の長い骨ではなく頸椎や胸椎など短い椎骨24個が巧妙に連結して構成されています。これらをつなぐクッションの役割を果たしているのが椎間板です。頭の方から7個の「頸椎」、12個の「胸椎」、5個の「腰椎」、そして「仙骨」と「尾骨」に分類され、このうち「腰椎」部分が腰にあたります。これは体の要となる需要な部分で、座る、立つ、歩くなどほとんどの行動は腰を起点に行います。背骨はとても複雑な構造であるため、ほんの小さな歪みが生じただけでも不調の原因になりやすいのですが、その多くが腰痛というサインになって現れます。

 

腰痛の主な種類

腰痛には鈍痛が続く慢性的なタイプと、突然動けなくなるほどの激痛に襲われる急性的なタイプがあります。またその原因も姿勢の悪さ、激しい運動や労働による疲労や損傷、老化、脊髄神経の異常、内臓や全身性疾患、心因性のストレスなどさまざまです。ここでは腰痛の代表的な症状とその原因をご紹介します。

 

一般的な腰痛(慢性筋肉性腰痛症)

腰の骨を支える筋肉や靭帯(じんたい)に疲労がたまった状態です。軽い症状なら比較的早く回復しますが筋肉の疲労が積み重なると腰の筋肉がこわばってうっ血し、鈍い痛みを常に感じるようになります。これが慢性筋肉性腰痛症です。また慢性筋肉性腰痛症は「筋肉痛」の仲間です。

 

ぎっくり腰(突発性腰椎捻挫)

ぎっくり腰とは膝を曲げずに重い荷物や物を持ち上げたり、急に体をねじったりした時、あるいは十分な準備体操なしで激しい運動をするなど、腰に急な負担をかけた時に痛みを感じるものです。直接の原因は大きく分けて2つあります。まず腰椎の周辺にある関節包や靭帯、椎間板(椎骨にかかる衝撃を和らげるクッションのような役割を持つ軟骨)などを強く捻挫したり、大きく損傷したりした場合、何らかの急な動作が加わって背中から骨盤を覆っている大きな広背筋の一部か筋膜が切れたり、引っぱられたりした場合が考えられます。

 

椎間板ヘルニア(腰椎椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニア(正式名称=腰椎椎間板ヘルニア)は、外から何らかの大きな力がかかることで、腰椎部分の椎体と椎体の間にある椎間板に亀裂が入り、中の髄核が押し出され、それが脊髄神経(神経根)を圧迫して激しい痛みを引き起こす病気です。痛みは腰だけではなく、臀部から足にかけてひどい痛みやしびれを感じる坐骨神経痛などの症状を伴い、筋力の低下などを起こすのが特徴です。ひどい場合は排尿ができなくなることもあります。

長時間の座り仕事や運転、運動など、背骨に負担をかけている日常生活、椎間板の老化(20歳を過ぎると徐々に老化します)、姿勢の悪さによる骨盤の歪みなどがある状態で、急に腰に大きな力が加わることが原因となります。

 

腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)

腰部脊柱管狭窄症は生まれつき脊柱管が狭い場合もありますが、椎間板や椎間関節の老化、変形などにより脊柱管が狭くなり脊柱管の中を通っている神経が圧迫されることで痛みやしびれが起こる病気です。40~50代以上、特に高齢者に多くみられ、女性より男性にやや多いのが特徴です。立って腰が伸びた状態の時に痛みやしびれが強く、背筋を伸ばして歩くと、腰から足の裏にかけて痛んだり、足のしびれを感じたり、足がもつれたりするのが一般的な症状で、朝や寒い季節に多く現れます。悪化すると背中を丸めて寝ないと痛くて眠れなくなるほどになります。

 

変形性脊椎症

変形性脊椎症は、椎間板の老化によって上下の脊椎の骨が変形することで引き起こされ、周囲の筋肉・靭帯も弱くなり、腰椎を支える筋肉がこわばって、動作をする時期に痛みを感じる病気です。発症は一般的に40歳以後で若い頃から重労働に従事してきた人や激しいスポーツをしてきた人に多く見られ、椎間関節の老化、椎間板症、脊椎体からの骨棘による圧迫などが痛みの直接的な原因と考えられています。体を動かしていると痛みが軽減してくる特徴がありますが、疲れがたまると再び出てくるので、決して無理をしないことが大切です。

 

その他の腰痛

転んだり、事故に遭ったりなどして、外部から衝撃を受けた後の腰の痛みには注意が必要です。特に高齢の人の場合、打撲だと思っていたら実は骨にヒビが入っていたり、骨折していたりというケースもあります。安静にしていても痛む時や、患部に熱がある、痛みが長引くというような場合は整形外科の診察を受けることをおすすめします。

また腰痛は腰そのものの問題ではなく、内臓などの疾患によって引き起こされることもあります。これらの痛みは鈍痛となって慢性的に起こることがほとんどです。泌尿器科疾患などのほか、悪性腫瘍の転移などの可能性もありますので、やはり腰痛が長引く時や、寝ている時に痛みがひどくなる場合などは軽視せず医師の診察を受けましょう。

 

腰痛の対処法

ついらい腰痛を少しでも和らげるために、痛みの症状に応じた対処法をご紹介します。

 

急性的な腰痛で動けなくなった時の対処法

腰痛が出たら腰に負担がかからないようにできるだけ横になりましょう。ただし横になるのも痛い場合は無理をせず少しずつ動き、できる範囲で一番楽な体勢を取り、痛みが少し治まってからゆっくり楽な寝方で横たわってリラックスするとよいでしょう。この時腰を回したり、動かしたりしないようにし腰の負担をかけないようにしましょう。sらに痛む部分を冷やす、コルセットやさらしで保護するなども効果的です。また鎮痛薬で痛みが少しでも軽減すれば大分楽になるのではないでしょうか。

 

慢性的な腰痛の対処法

激痛ではないが慢性的に腰が重たい、あるいは腰にだるさを感じる場合の対処法です。まずは腰に負担をかけないようにし、腰を温めるようにします。ゆっくり入浴するのもいいでしょう。無理のない範囲でストレッチやマッサージ、ツボ刺激を行うのも効果的です。またこの場合も鎮痛薬で痛みを和らげるのも方法の一つです。

肩こり痛で悩んでいる方必見!肩こりのについて解説します。

肩こり痛は日常の何気ない動きが原因で起こる、非常に身近な痛みの一つといえます。生活習慣の改善やマッサージなど、日常の心がけや日々のケアで痛みを予防・軽減する方法もありますが、つらい時は鎮痛剤で痛みを抑えるのも一つの方法です。

 

目次

  1. 肩こり痛とは
  2. 肩こりのメカニズム
  3. 肩こりの主な原因
  4. 肩こり痛の対処法

 

1.肩こり痛とは

肩こり痛は頭・首・肩・背中のあたりに感じる、痛み・重さ・張り・硬さなどの自覚症状の総称です。肩こりが肩の筋肉の血行不良であるということはよく知られていますが、その血行不良の原因はさまざま。ほとんどの場合は筋肉の使い過ぎ、また筋力の低下によって起こります。

 

2.肩こりのメカニズム

肩こりは腕や手にしびれの出る頸肩腕症候群の症状としても現れます。肩は体重の1/10近い重さを占める頭と腕を支えているため、負担がかかりやすい部位です。車の運転やデスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けたり、寝転んで本を読むなどの無理な姿勢をとったりすることで肩の筋肉に負担がかかり、疲れて乳酸という疲労物質がたまります。すると筋肉が硬くこわばって血管を圧迫し血行が悪くなります。これが肩こりの第一段階で、この時点で肩を叩いたり、ストレッチを行ったりするなどして筋肉の緊張をほぐして血行をよくすれば、疲労物質は血流に乗って取り除かれ肩こりは解消されます。

 

3.肩こりの主な原因

姿勢

長時間のデスクワーク、肘まくらでの体制など不自然な姿勢など。

体型や体質

猫背、なで肩など。

肩以外の異常

肺や心臓、胃腸や肝臓などの疾患からくるもの、貧血や低血圧、歯のかみ合わせが悪いなど。

生活環境

強い冷房、枕や寝具の硬さが合っていない、メガネの度が合っていない、精神的ストレスなど。

老化

四十肩、五十肩など。

 

4.肩こり痛の対処法

肩こり痛の痛みを和らげるためには、肩全体を温める、半身浴でゆっくり入浴する、マッサージやツボの刺激をする、ストレッチをするなどが効果的です。運動不足、筋力の低下、姿勢の悪さなどに起因するものが多いため、日頃から筋トレ、適度な運動、ストレッチなどを積極的に取り入れると予防や改善につながります。

市販の貼り薬や塗り薬を使用したり、鎮痛剤を服用したりするのも一つの方法ですが、あまりに痛くてがまんできない時や、腕や手にしびれが出るようなひどい肩こりが長時間続くような場合は、整形外科の診療を受けることをおすすめします。

交通事故の慰謝料が丸分かり!通院から6ケ月後のケースではいくら?

「交通事故によるケガで6ケ月通院した場合の慰謝料の相場が知りたい」

「保険会社から提示された慰謝料が妥当な金額かわからない」

慰謝料の金額はどのような基準で決められるのでしょう?またどの程度の金額が妥当なのでしょう?交通事故で被害に遭ったとき加害者との示談交渉でトラブルになりがちなのが慰謝料です。この記事では交通事故の被害者が加害者に請求できる慰謝料について、金額の目安から具体的な計算方法まで、法律や保険に詳しくない方にもわかりやすいよう解説しています。

 

目次

  1. 交通事故で6ケ月通院したときの慰謝料は?
  2. 慰謝料を確実に請求するためには?治療時のポイント3つ
  3. 痛みが続いているのに症状固定になったら後遺障害慰謝料などの請求を

 

1.交通事故で6ケ月通院したときの慰謝料は?

 交通事故の被害者が加害者に請求できる「示談金(損害賠償金)」には、経済的な賠償だけでなく、精神的苦痛に対する賠償、すなわち「慰謝料」も含まれます。

たとえば交通事故によるケガで通院すると治療費や交通費などのほかに「入通院慰謝料」を請求することができます。この慰謝料の金額を左右するのは「通院期間(通院日数)」と「慰謝料の算定に使用する計算基準」です。慰謝料の計算基準には以下の3つがあります。

自賠責保険基準:法令で定められた最低限の補償

任意保険基準:自動車保険会社ごとに決まっている

弁護士基準(裁判基準):判例に基づいており、弁護士が用いる

 

自賠責保険基準による計算方法

自賠責保険基準とは、交通事故の加害者が自賠責保険自動車損害賠償責任保険)のみに加入していた場合に用いられる計算基準です。そもそも自賠責保険とは、車を運転する方が最低限の補償をするために加入が義務付けられている保険です。自賠責保険による入通院慰謝料は1日あたり4300円です(2020年3月までの事故については4200円)。慰謝料の計算は「入通院期間(入院期間+通院期間)」と「実通院日数(実際に入通院した日数)×2」の少ないほうの数字に4200円をかけた金額となります。では通院6ケ月のケガを負ったとき、自賠責保険基準での慰謝料はいくらになるのでしょうか?

【一例】

入通院期間=入院期間1ケ月+通院期間6ケ月=210日

実通院日数=(入院日数30日+実際に通院した日数〈回数〉50日)×2=160日

210日より160日の方が少ないので160日に1日当たりの慰謝料を掛けて計算します。

請求できる慰謝料=160日×4200円=67万2000円

ただし入通院での自賠責保険での損害賠償の限度額は120万円と定められています。この損害賠償には慰謝料の他にも治療費や交通費、休業補償なども含まれています。加害者が任意保険に加入していれば、トータルの損害賠償が120万円を超えた金額は任意保険会社に請求可能です。しかし、加害者が任意保険に加入していない場合は、加害者本人に請求します。このとき、加害者本人に支払う金銭がなかったり、支払いを拒否するケースがあり、トラブルに発展するケースが数多くあります。

 

②任意保険基準による計算方法

 任意保険基準は交通事故の加害者が自賠責保険だけでなく、任意加入の自動車保険に加入していた場合に用いられます。任意保険は自賠責保険だけではカバーしきれない部分を補うためのものなので、慰謝料の金額も自賠責保険と比べると高めに設定されています。ただし、保険会社によって基準額や設定金額が異なるため、一律で計算することは難しいと言われています。

【一例】

入院1ケ月・通院6ケ月の相場から請求できる慰謝料=83万2000円

自賠責保険基準で計算した67万2000円は上回っていますが「そこまでの差ではない」と感じる人もいるかもしれません。これらの金額で納得できない場合は弁護士に相談したり裁判を起こすといった選択肢もあります。

 

③弁護士基準(裁判基準)による計算方法

 弁護士基準は過去の裁判での判例をもとにしたもので、「裁判基準」とも呼ばれます。他の基準に比べて高額になるケースが多く自賠責基準と比較すると約2倍もの差が出る場合もあります。

弁護士基準による慰謝料の算定では他覚症状(他の人から客観的に判断できる症状)の有無によっても金額が変わってくるので注意しましょう。

弁護士基準での慰謝料は「弁護士に依頼をする」か「裁判を起こす」ことで請求できます。弁護士基準の慰謝料が請求できれば自賠責保険基準の慰謝料の金額の2倍近くになる可能性もあります。

 

2.慰謝料を確実に請求するためには?治療時のポイント3つ

交通事故の慰謝料には一定の基準が定められています。

しかし請求をするには交通事故とケガとの因果関係を証明しなければなりません。そのためにはしっかりと医師の診断を受け治療する必要があります。

慰謝料を請求するための治療のポイントは以下のとおりです。

1.医師の診断を受けカルテを作成してもらう

2.適切な治療を継続的に受ける

3.完治または症状固定まで治療を続ける

 

1.医師の診断を受けカルテを作成してもらう

交通事故の慰謝料を適切なものにするためにも事故にあってすぐに、遅くても1週間以内に医師による診断を受ける必要があります。注意点としては診断書を発行できるのは整形外科など病院の医師のみです。整骨院接骨院の先生は厳密には医師ではありませんので診断書は発行できません。そのため交通事故によるケガはまず病院で治療を受けましょう。また診断時は医師に自覚症状をもれなく伝え診断書やカルテに記載してもらう必要があります。自覚症状を医師に伝えなかったり、遅れたりすると事故との因果関係が証明できずに慰謝料を含めた損害賠償を適切に行えない可能性があります。

 

2.適切な治療を継続的に受ける

交通事故とケガの因果関係が認められる条件に「自覚症状に一貫性・連続性がある」とされています。そのため通院頻度が重要で症状に見合った治療を継続して受ける必要があります。通院頻度は症状によって異なるだけでなく個人差もあります。週に2・3度の通院で経過を見ながら治療するケースもありますし、毎日リハビリをしなければならないケースもあります。医師と相談して決めるようにしましょう。

 

3.完治または症状固定まで治療を続ける

慰謝料の計算には治療期間が重要なポイントになります。そのため医師から完治または症状固定と言われるまで治療は続けましょう。「症状固定」とは治療を継続してもそれ以上症状が良くならないと判断された状態です。もし通院を継続せず中断などをしてしまった場合は期間の長さに関わらずその時点で症状固定したと見なされて治療費を打ち切られる可能性があります。主治医による症状固定の判断が下されるまでは継続して通院することが大切です。

また通院を継続していてもあまりに通院頻度が低いと症状が軽いと見なされ慰謝料が低く計算される可能性もあります。忙しくても定期的に通院を続けることが大切です。

通院の一時中断や頻度の低さなどを理由に保険会社から治療費等の計算期間を打ち切ると宣言されるケースもあります。その際慰謝料を低く抑えられないようにするためには、診断書やカルテなどの資料を保険会社へ提供し、まだ治療が必要なことを十分に訴える必要があります。こうした対応ができるよう定期的に通院して担当医としっかりコミュニケーションを取り、自覚症状を診断書やカルテに詳細に記載してもらうよう心がけましょう。もし通院先の医師との意思疎通がうまくいかなかったり納得がいかないと感じたら通院先を変えることもできるので、不満を抱え込まないようにしましょう。

 

3.痛みが続いているのに症状固定になったら後遺障害慰謝料などの請求を

交通事故による影響で6ケ月など一定期間の通院治療を受けても仕事や日常生活に支障が出るような障害が残ってしまう場合があります。このような場合後遺障害の等級認定を受けることで入通院慰謝料とは別に

・後遺障害慰謝料

逸失利益

・休業損害

を請求することができます。

 

「後遺障害慰謝料」「逸失利益」「休業損害」とは

「後遺障害」とは治療後にも残ってしまう「後遺症」のうち交通事故によるものと医学的に証明され労働能力の低下や喪失が認められるものを指します。

交通事故による後遺障害と認められた場合には、第1級~第14級までの等級が認定され等級に応じた後遺障害慰謝料を請求できます。

後遺障害慰謝料の計算も入通院慰謝料と同様に「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判基準)」の3つの基準があります。どの等級に認定されどの基準で計算するかによって慰謝料の金額が大きく変わるため、仕組みをしっかり理解しておきましょう。

 

逸失利益と休業損害

逸失利益とは交通事故に遭わなければ被害者が将来得られたはずの経済的な利益を指します。後遺障害によって収入に影響が出ている場合は後遺障害慰謝料と合わせて逸失利益の補償も得られる可能性があります。

逸失利益の計算は以下の計算式で行います。

基礎収入×労働能力損失率×就労可能年数のライプニッツ係数(労働に対する将来の利息分を調整する係数)=逸失利益

基礎収入は給与所得者であれば、原則として交通事故に遭う前の収入(賞与含む年収)がベースとなり、事業所得を得ている人であれば申告所得が目安となります。

 逸失利益を請求するためには後遺障害慰謝料と同様に、後遺障害の認定を受ける必要があります。申請できるのは「症状固定」後になりますが、それ以前に通院などで休業した場合の経済的損失は、別途に「休業損害」として補償を受けることができます。

 

後遺障害慰謝料は被害者請求で申請するべき

後遺障害等認定の請求方法として

・加害者の加入する保険会社が申請手続きを行う事前認定

・被害者が自ら申請手続きを行う被害者請求

がありますが、被害者請求であれば適正な認定が行われるように自ら立証するため、納得できる結果が得られる可能性も高くなります。

事前請求

メリット

書類・資料集めなどの準備はすべて加害者の加入する保険会社が行ってくれる。

デメリット

加害者側の意向を踏まえた認定になる可能性がある。

被害者請求

メリット

適正な認定がされるよう必要な書類を漏らさず提出できるので納得のいく等級が認定されやすい。

デメリット

被害者自身で資料集めや申請を行うので手間がかかる。

被害者請求をするためには主治医に後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。できるだけ内容は詳細に記載したほうが後遺障害認定は認定されやすくなります。

自分でイチから書類等を集め不備を出さず適切な後遺障害等級認定を受けることは非常に大変です。弁護士など専門家に任せるという手もあります。

交通事故に遭ったら早めに弁護士に無料相談する

交通事故に遭って通院や入院をともなうケガをした場合は早めに交通事故に強い弁護士事務所に相談しましょう。

 弁護士に相談相談すべきとされる理由は以下のようになります。

交通事故の示談金(損害賠償金)が納得のいく金額になりやすい

後遺障害認定などの煩わしい手続きに苦労しない

不安なことがあればすぐに相談できる

示談交渉をすべて任せられるので精神的なストレスがない

案件知識が豊富なので安心して交渉を任せることができる

 

弁護士に依頼すれば示談交渉の代理はもちろん、弁護士基準による慰謝料の計算、後遺障害認定の手続きなども行ってくれます。

 

交通事故、対応や自動車保険の自賠責保険と任意保険の違いを理解しよう!

突然起きる交通事故。車を運転中に加害者となるケースも被害者となるケースもあるでしょうし、歩行中に被害者になるケースもあります。自動車保険は万一の事故に備え加入しておくものです。被害者になった場合と加害者になった場合での対応と自動車保険について改めて確認しましょう。

 

目次

  1. 被害者になったケースですべきこと
  2. 加害者になったケースですべきこと
  3. 自賠責保険
  4. 任意保険
  5. まとめ

 

1.被害者になったケースですべきこと

①相手の身元を確認する

免許証、車検証などのコピーを取る。または携帯電話のカメラなどで撮影しておく。

②現場の保全

交差点内のどこで事故が起きたのか、携帯電話のカメラなどで撮影。目撃者がいれば証言を協力依頼。

③警察へ届ける

事故証明書を発行。

④保険会社へ連絡

たとえ歩行中でも、自分の自動車保険が使える場合も。事故発生から60日以内の届け出が必要。

 

被害者となった場合、相手から「示談にしましょう」とある程度の金額を提示される場合があります。この時点で念書やサインなどをしてしまうと、後々保険会社が対応できないことも。当人同士の示談はできるだけ避けるべきです。

 

2.加害者になったケースですべきこと

①お互いの安全の確保

ケガ人を安全な路肩などに移動し、救急、警察へ通報。

二次被害の防止

発煙筒、停止表示機材を設置する。見通しの悪い道、高速道路などでは特に重要。

③警察へ届ける

事故証明書を発行。

④保険会社へ連絡

その場ですぐに連絡するのが望ましいが、自身もケガを負ったケースなどでは60日以内に届ける。

 

まずは相手と自分の安全確保が第一。余裕があれば、事故の状況を記録しておきましょう。

次に自動車保険とは何か?自賠責保険と任意保険の違いを理解しよう。

自動車保険とは、車に乗っていて交通事故を起こした時に、その損害を補償してくれる保険のことです。

 

3.自賠責保険

自賠責保険とは、自動車に乗る人が強制的に加入させられる保険のことです。これは、「自動車損害賠償保障法」で定められているもので絶対に加入しなくてはいけないので「強制保険」とも言われています。

ただし、補償の範囲が限られており、被害者の補償にしか保険金が出ません。また、補償の上限は傷害で120万円まで、死亡で3000万円までの補償が受けられます。

モノを壊したり、自分がケガをしたときには、保険金を受け取ることができません。

交通事故を起こしてしまうと、自賠責の範囲内で済む可能性は低いので任意保険が必要になります。

 

4.任意保険

 交通事故を起こした時には自賠責保険だけで賄うことはできません。そのため足りない部分を補うために民間の保険会社による自動車保険が用意されています。

これは強制ではなく任意で加入する保険なので「任意保険」と呼ばれていますね。

交通事故を起こしてしまうと相手の車を壊してしまいますす、相手の運転者もケガをするでしょう。またガードレールや電柱にぶつかってしまうとそれらの弁償もしないといけません。

だから損害賠償の金額としては数百万円以上になることがザラなわけです。万が一相手を死亡させてしまったら1億円以上の賠償となる可能性があります。

でも任意保険に入っておけば、自賠責保険で補償される金額を超えた部分を保険金として受け取ることができるようになります。

対人賠償保険は無制限に設定されていることが多いので、損害賠償が数億円規模になっても対応することができるわけです。個人で支払うのは不可能ですから任意保険に加入しておくと安心でしょう。

ただ、自賠責保険よりも補償内容が充実している分料金が高くなるのがネックですね。

基本的には保険会社のリスクが高いほど保険料も高くなる傾向にあります。例えば以下のような場合です。

若者:スピードを出しやすいので事故率が高い。

大きな車:事故を起こした時に被害が大きくなりがち。

高級車:盗難率が高い。

保険会社も商売でやっているわけですから、補償額が大きくなりやすい人には高めの保険料を請求するわけです。

一方保険会社のリスクが低くなれば保険料も安くなりがちです。

年齢が高い:無謀な運転をしないので事故率が低い。

ゴールド免許:模範的な運転なので事故率が低い。

安全装置搭載車(エアバッグ、ABSなど):事故の被害を軽減できる。

盗難防止装置搭載車(イモビライザー):盗難率が低い。

こういった感じで、交通事故を起こしにくい人ほど保険料が安くなっていきます。事故を起こさないのが大前提なので、安全運転を心がけて信用を積み重ねるようにしましょう。そうすれば保険料も下がっていくはずです。

また保険会社によって独自の割引を用意していることもあるのでチェックすることをお勧めします。

 

5.まとめ

どれだけ運転に自信がある人でもいつ事故に遭うかは分かりません。自分に非が無かったとしても他人の事故に巻き込まれる可能性もあるわけです。もし自分が事故を起こした時のことを考えてみてください。自分だけが怪我をするなら良いですが、車に大切な家族や友達を乗せていたらどうでしょうか?任意保険に入っていないばかりに補償を受けることができないのは最悪です。任意保険は自分だけでなく他人を守るものですから必ず加入することをお勧めします。安全に楽しく車に乗るために任意保険は欠かせないものだといえますね。

 

交通事故での病院利用は通常とは異なる?気になる治療費の支払いや保険と注意したい通院方法・期間について

交通事故の被害者となってしまったときには、たとえ自覚症状がなかったとしも、まずは病院での診察を受けましょう。なぜなら、むちうち(頸椎捻挫)などは事故当日は大した痛みもなく、後になって「手足のしびれ」「首肩の痛み」「めまい」などの症状が現れるケースもあるからです。また、交通事故示談の観点からも、病院で診察を受けることが重要です。一度「物損事故」としてしまうと、治療費や慰謝料の請求が難しくなってしまうのです。

 

目次

  1. 自覚症状がなくても通院すべき!
  2. 治療期間はいつまで?

 

1.自覚症状がなくても通院すべき!

交通事故にあったラグすぐ病院での診察を!

症状によっては交通事故が発生した直後に必ず現れるものでもなく、自覚症状には個人差もあります。たとえば、むちうち・低髄液圧症候群・高次機能障害などの症状は、治療を続ける中で後遺障害(後遺症)として捉えられる場合も少なくありません。これらの症状は医学的な面から見ても判断が難しい部分もあるので詳しい検査が必要でもあります。自覚症状がなかったとしても、まずは病院で診察を受けて、体の具合に変化を感じたときには医師にきちんと伝えましょう。

 

通院しないと慰謝料・治療費の請求ができない可能性も

「大したケガではないから」といって病院に行かないでいると、人身事故ではなく物損事故として処理されてしまうおそれもあります。「通院しない=ケガをしていない」と判断されてしまえば、後から症状が現れても交通事故との因果関係が証明しづらくなってしまいます。物損事故になると慰謝料や治療費の請求ができない可能性があるので大きな損を被ることになりかねません。あとから痛みが出ても病院にかかる治療費は自腹で支払うことになるため事故にあった早い段階で通院するようにしましょう。

 

病院を探す・変更するには?

交通事故のケガで多い症状と対応する医科についてまとめました。

頭部:事故時に頭部を打ち吐き気やめまいなどが生じたなど→脳神経外科

視覚:事故によって急激に視力が衰えたなど目の異常が見られたなど→眼科

頭部以外(頭部より下の部位):打撲・骨折・むちうちなど頭部以外の箇所に自覚症状がみられたなど→整形外科

その他:自覚症状がない、どの医院に通えば良いかわからない→整形外科(その後の処置も含めると総合病院の整形外科)

また「通うのがしんどい」「医師に相談しにくい」など何らかの理由で病院を変更したいときには転院も可能です。その場合には担当医師から紹介状をもらって転院先の医師に自覚症状などをしっかりと伝えましょう。特に後遺障害診断書には以前の入通院歴が記載されないこともあるため、担当医師とのコミュニケーションが大切だといえます。

 

治療に健康保険は使える!領収書はきちんと保管しよう

交通事故でケガをしたときには治療のために健康保険が適用されます。加害者側から治療費が出たとしても途中で打ち切られる可能性もあるので健康保険の利用を念頭においておきましょう。また病院で治療をした領収書だけでなく、通院のためにかかった交通費なども請求できます。領収書もきちんと保管しておくことが大切です。後からまとめて加害者に請求できるので、ケガの治療に関係している領収書は捨ててしまわないようにしましょう。バスなどを利用して領収書が発行されない場合にはかかった料金や日付などをメモに残しておくと安心です。

交通事故でケガを負ってしまったときに、治療費の支払いを誰がするのかを押さえておく必要があります。また入通院慰謝料の請求には通院期間・通院頻度も関係しており、後遺障害診断書の作成にも影響します。慰謝料以外にも加害者側に請求できる損害賠償はたくさんあるので、どのようなものが該当するのかを把握しておきましょう。

 

治療費は基本的に相手方の保険会社が負担する

治療費の支払いは加害者が加入している保険によって主に以下の3通りが挙げられます。

・加害者本人または加害者が加入している任意保険

加害者や保険会社から病院に対して直接的に治療費が支払われるので被害者が立て替える必要はありません。病院に交通事故の被害者であることを伝えて保険会社に請求してもらうように相談をしましょう。

・加害者が加入している自賠責保険

保険会社が治療費の支払いに応じてくれなかったり、そもそも加害者が任意保険に加入していなかったりするケースもあります。その場合には自賠責保険を利用して病院に治療費を支払ってもらうことになります。この場合は多くが被害者が一時的に治療費を立て替えて治療が完了(もしくは症状固定時)した後示談交渉するときに請求します。

・被害者が加入している任意保険

被害者が加入している「人身傷害保険」を利用して治療費を支払う方法もあります。被害者側が治療費を払うのは理不尽に思えるかもしれません。しかし人身傷害保険は過失割合に関係なく補償がなされます。そのため自身の過失割合が大きいケースでは利用するメリットがあります。また治療を継続していても相手方の保険会社から「治療費の打ち切り」や「症状固定を勧められる」といった問題が起こる場合もあります。症状固定となってしまうと、後遺症が残る場合を除いては治療費が請求できなくなってしまう点も押さえておきましょう。慰謝料などの損害賠償請求にも影響するため、完治もしくは医師による症状固定の診断が済むまでは治療を継続したほうがよいといえます。

 

通院期間と慰謝料の関係

病院にどれくらいの期間通ったかを示す通院期間は入通院慰謝料の金額に影響を与えます。通院期間が長いほど金額が大きくなる傾向にあるので、完治もしくは症状固定となるまできちんと通いましょう。また通院頻度についても適切な回数を医師と相談して決めることが大切です。通院頻度が少ないと加害者側の保険会社から「ケガが完治している」とみなされる可能性があり、治療費の打ち切りや慰謝料の減額を求められる可能性があります。納得できる入通院慰謝料を得るためには週に2~3回の割合で通うことになります。通院を途中で止めてしまったり期間が空いたりしてしまうと、ケガの程度が軽いと判断されることもあるので注意が必要です。特に後遺障害診断書の内容にも影響を及ぼすので、医師の指示に従って治療を継続することを心がけましょう。

 

その他の損害賠償請求

入通院慰謝料や治療費以外にも加害者側に対してさまざまな損害賠償が行える可能性もあります。休業補償や病院までの交通費をはじめとして、後遺障害と認定されれば逸失利益(将来得られるはずだった収入)なども請求できます。どんなものが損害賠償として盛り込めるのか詳しく知りたいときには、交通事故問題を専門とする弁護士に相談をしてみるのも1つの方法です。経験が豊富な弁護士であればいろいろなケースに対応できるので心強い味方となってくれるはずです。

 

2.治療期間はいつまで?

治療期間は担当医師が決める

 たとえばむちうちの治療期間の目安は3ケ月程度といわれていますがこのタイミングで保険会社から連絡がくることがあります。治療期間は個人差があるため、継続しして治療が必要なときには客観的な証拠をもとに保険会社とやりとりを重ねていく必要があるのです。

 

複数の病院に通っても問題はない?

治療の質を上げるために複数の病院に通うこと自体は問題がありません。医師の診断に納得できないときはセカンドオピニオンを求めることも重要です。ただ後遺障害認定の手続きを行うときには「症状の一貫性」が問われるのでそれぞれの担当医師に自覚症状をきちんと伝えましょう。また通院する病院が多いほど領収書の保管や計算もややこしくなりがちなので工夫することも大切です。

 

整骨院接骨院などに通っても問題ない?

ケガの治療を効果的に行うために整骨院接骨院に通うのは問題ありません。気をつけておきたいのは、整骨院接骨院、整体院などは病院ではない点です。整骨院接骨院の先生は厳密には「柔道整復師」であり医師免許をもっていません。医療行為つまり診断や検査、治療や予防をおこなえるのは医師のみです。もちろんマッサージ療法などで痛みを和らげるのも立派な治療ですが医師の指示や同意がなければ治療費を損害賠償請求できない危険があります。まずは医師の診断を受けた上で「整骨院に通いたい」旨を医師に伝えてから通うようにしましょう。担当医師に相談をしたうえできちんと許可をもらってから通院しましょう。

 

病院や保険会社と揉めてしまったら弁護士に相談

 交通事故の被害者となってケガの治療を進めていく中では、治療費のことで相手方の保険会社とのやりとりに苦労をしてしまう場合もあります。

あなたの頭痛はどのタイプ?頭痛の種類とその原因・症状を解説します!

日本人の約6~8%が頭痛に悩んでいるといわれています。中でも女性は男性の4倍も多いとされます。頭が痛くなるととりあえず横にならないと活動ができなくなる方もいらっしゃいるでしょう。あるいは頭痛がそれほど強くなくても、頭がしめつけられるような感じで一日調子があがらないという人も。今回は頭痛について解説するとともに主な頭痛の種類とその特徴を説明します。

 

目次

  1. 頭痛の症状のタイプ
  2. 頭痛の種類
  3. 頭痛のおきるメカニズム
  4. 主な頭痛の種類

 

1.頭痛の症状のタイプ

ひと口に頭痛といってもいくつかのタイプがあります。主なタイプの一つはガンガン、ズキズキするような拍動性の頭痛、もう一つは重く締めつけるような頭痛です。

頭の表面がびりびりするような感じも頭痛と呼ばれることがあります。頭痛は単独に起きるだけでなく、他の症状を伴う場合もあります。

例えば頭痛に伴って眼の奥が痛くなったり、嘔吐を伴うこともあります。ここでは様々な頭痛の種類についてお話しします。

 

2.頭痛の種類

頭痛は痛みの強さ、痛む部位、持続時間など症状も人により異なります。

頭痛は急性の頭痛と慢性の頭痛に分けられます。これらの二つでは頭痛の種類が異なります。前者にはくも膜下出血脳出血でおきる非常に危険なものも含まれます。

雷が落ちたように突然起こる超急性に発症する激しい頭痛は「雷鳴性頭痛」ともよばれ、緊急に処置をしなければならないことが多く、直ちに医療機関を受診することが必要です。

後者のタイプでも軽度のものでも突然現れた頭痛、だんだんひどくなる頭痛であれば医療機関を受診することをお勧めします。

慢性の頭痛は大きく血管性頭痛と緊張性頭痛に分けられます。

血管性頭痛には血管が頭痛の原因になっているもので、片頭痛群発頭痛が多くみられます。緊張性頭痛は後に述べるように頭皮や頸部の筋肉の緊張によるものです。

頻度的には片頭痛と緊張性頭痛が慢性頭痛の大部分を占めていますがとりわけ多いのが筋緊張性頭痛です。

一次性頭痛、二次性頭痛 という分類もあります。頭部CT,MRI画像検査などで原因となるような病変のないものを一次性頭痛と呼び、頭痛の多くがこれに相当します。これに対して、例えば脳出血や脳腫瘍など他の疾患が原因で起こる頭痛を二次性頭痛と呼びます。

 

3.頭痛のおきるメカニズム

頭痛はどうして起きるのでしょうか。

慢性の頭痛は大きく血管性頭痛と緊張性頭痛に分けられますが、その二つでは頭痛の起きるメカニズムが異なります。

脳自体の中には痛みを感じる神経は無いとされています。ではどこで頭痛を感じるかというと、髄膜といわれる脳を覆う膜、あるいは脳にある血管の壁、これがひきのばされたりして頭痛を感じるのです。

血管性頭痛の場合、血管性という名の通り血管で痛みを感じますから、ガンガン、ズキズキといった拍動性のある頭痛を感じるのが特徴です。

 緊張性頭痛は頭皮や背中から首への筋肉が過剰に収縮することによる頭痛で、筋肉の緊張が高まると、筋肉内の血流が悪くなり筋肉の中に乳酸やピルビン酸などがたまることが頭痛の原因になると考えられています。

それが周囲の神経を刺激し、締めつけられるような痛みになります。そのため拍動性のある頭痛ではなく、頭部の周囲を締めつけるような、あるいはヘルメットをかぶったような頭痛になります。

血管性頭痛と緊張性頭痛、二つのタイプの頭痛を合併している場合もあります(混合性頭痛)。

他方、頭の表面がびりびりするような感じの頭痛は、頭皮の表面の末梢神経などの障害による神経痛と呼ばれるものです。

 

4.主な頭痛の種類

4-1.片頭痛

片頭痛は上で述べたようにガンガン、ズキズキする血管性頭痛の代表です。

片側あるいは両方のこめかみから目のあたりにかけて、脈打つようにズキズキと痛む拍動性の頭痛が出現します。この発作は一般に数時間から2、3日続きます。

片側に起きることから片頭痛と呼ばれるのですが、実際には症状は両側性のこともあります。頭痛には吐き気や嘔吐をしばしば伴います。

典型的な片頭痛では、頭痛が起きる前に視野のなかにチカチカと光る点、ギザギザした光(閃輝暗点)が出現し段々大きくなっていき、それがおさまったころに頭痛がしてきます。しかし閃輝暗点を伴わない場合も多いです。

症状が強いときは、とりあえず横にならないと一日活動できない、仕事が手につかないという人もいます。頭痛は動きまわると悪化する傾向があります。

片頭痛には症状の波があり、頭痛が続いていたと思ったら、しばらくしたら収まっている時期がきます。

チョコレート、チーズ、赤ワインなどのお酒がきっかけで頭痛がひどくなったり、音、光などの刺激がきっかけになって症状が悪化したりするので、そのような傾向がある人はそのような食品や刺激を避けるようにすることが必要です。

片頭痛で頭痛の起きる仕組みは血管性であるといいましたが、もう少し詳しくいうと、血管が何らかの原因で収縮し、頭蓋内血管に分布する三叉神経などの神経終末が刺激されると、血管作動性物質(神経ペプチド)が放出され、今度は血管が拡張するというものです。同時に無菌性の炎症が起こり、炎症反応が次々に血管を広げていくことも痛みの原因となります。

 

4-2.群発頭痛

群発頭痛も血管性頭痛の1つです。

症状は普通は片側に出現します。早朝に起きやすく、眼の奥などが痛み、眼の充血や血涙、鼻閉などが起きるのが特徴的です。

群発頭痛の痛みは「目がえぐれるような」あるいは「きりで刺されるような」激しい痛みのため、発作中は痛くてじっとしていることができず、部屋中を動き回ったり、時には頭をぶつけたりします。発作時間は1日あたり30分から数時間くらい続きます。

20~40歳代の男性に多いのが特徴です。

このような発作が一定期間、たいていは1~2カ月くらい続いた後(つまり文字通り頭痛が群発した後)、いったんおさまります。またしばらく時間がたった後(少なくとも1カ月)、再び同じような頭痛が群発します。休止期がより短いタイプもあります。

群発頭痛では眼の後ろ側を通っている内頸動脈が拡張して炎症を引き起こすため、目の奥が痛むと考えられています。アルコール飲酒がきっかけになることも多いので注意が必要です。

 

4-3.筋緊張性頭痛

締め付けるような頭重感が頭全体や後頭部や首筋に持続的に起きるのが特徴です。ふわふわしためまいを感じる方もいます。筋肉による頭痛なので横になると楽になりますし、朝よりも夕方に頭痛の症状が強くなることが多いのも特徴です。肩こりのある人に多くみられます。

痛みの強さは仕事や家事をなんとか続けられる程度のことが多いです。無理な姿勢や過度な緊張、ストレスなどが重なって起こることも多いので、パソコンの画面を長時間見る作業などをする場合にはときどき休憩しながらやることが大切です。

日頃から肩や首の筋肉が過度に緊張しないように、睡眠を十分にとり自分に合ったリラックス法を見つけることも大切です。

 

4-4.くも膜下出血脳出血など他の病気が原因で起こる頭痛

くも膜下出血脳出血とも急激な激しい頭痛がみられますが、いずれも出血の量が多ければ生命にかかわる早急な処置が必要な状態です。

くま膜下出血は、脳動脈溜(脳の血管の壁が弱くなっていてこぶ状になっている場所)の破裂などによって血管が破れ、脳を覆うくも膜と軟膜のすき間(くも膜下腔)に出血するものです。出血時には急激で激しい頭痛が生じ、しばしば「バットで急に後ろから殴られたような」頭痛が起きます。

激しい頭痛には嘔吐が伴い、場合によってけいれん発作もみられます。このような症状がみられた場合には、一刻も早い医療機関の受診が必要です。

脳出血は脳の動脈が破れて脳の中に出血し、血液のかたまりができて脳を内側から圧迫する状態です。これにより頭痛の他、運動神経が障害されれば出血と反対側の手足の麻痺も起きます。このような場合もただちに医療機関に受診しなくてはなりません。

脳動脈解離は交通事故での外傷やスポーツなどで、首をひねったり伸ばしたりしたときに内膜・中膜・外膜の三層構造をしている脳動脈の壁に亀裂が生じ、この裂け目に血液が入り込み、さらに動脈の壁が裂けてしまう状態です。

このようになるとさらに血管にこぶ(解離性脳動脈瘤)ができたり、おされた血管の内腔が狭くなったりします。脳動脈解離が頸部を走行している脳動脈である椎骨動脈などに起きると、うなじから後頭部にかけて急に痛みが生じます。

以上のようにくも膜下出血脳出血、脳動脈解離に伴う突然の激しい頭痛はいずれも医療機関にかからなくてはいけない緊急事態です。

 

4-5.脳腫瘍による頭痛

脳腫瘍は無症状のことも多いですが、大きくなると常に痛みや頭重感が出現するようになる場合もあります。特に日を追うごとに徐々に強くなってくる頭痛は注意が必要です。

 脳腫瘍による頭痛は朝方目が覚めた時に強く、起きてからしばらくすると軽快してくるMorning headacheといわれる特徴を示すことがありますが、全例がそうだというわけではありません。

 

4-6.高血圧に伴う頭痛

高血圧は通常ほとんど自覚症状がありませんが、高血圧のコントロールが非常に悪い人では後頭部などに頭痛を感じることがあります。高血圧がない人でも頭痛がある時は血圧も上昇することが多いので、血圧が頭痛の原因なのか結果なのかを区別するのは必ずしも簡単ではありませんが、急激な高血圧(血圧上昇)や長時間継続する高血圧は注意が必要です。

特に収縮期血圧が210mmHg以上、あるいは拡張期血圧が120mmHgくらいに上がると脳出血のリスクが極めて高くなるので、すぐに医療機関へ受診し治療することをお勧めします。

 

4-7.髄膜炎による頭痛

ウイルスや菌が脳脊髄液に入り込み、脳を覆う髄液に炎症が起きた状態が髄膜炎です。