ケンケンラボ

現役病院薬剤師が身近な病気や感染症、薬、健康食品、日常生活の中で疑問に思った事や勉強した事の中で役立つ情報を発信していくブログです。

交通事故での病院利用は通常とは異なる?気になる治療費の支払いや保険と注意したい通院方法・期間について

交通事故の被害者となってしまったときには、たとえ自覚症状がなかったとしも、まずは病院での診察を受けましょう。なぜなら、むちうち(頸椎捻挫)などは事故当日は大した痛みもなく、後になって「手足のしびれ」「首肩の痛み」「めまい」などの症状が現れるケースもあるからです。また、交通事故示談の観点からも、病院で診察を受けることが重要です。一度「物損事故」としてしまうと、治療費や慰謝料の請求が難しくなってしまうのです。

 

目次

  1. 自覚症状がなくても通院すべき!
  2. 治療期間はいつまで?

 

1.自覚症状がなくても通院すべき!

交通事故にあったラグすぐ病院での診察を!

症状によっては交通事故が発生した直後に必ず現れるものでもなく、自覚症状には個人差もあります。たとえば、むちうち・低髄液圧症候群・高次機能障害などの症状は、治療を続ける中で後遺障害(後遺症)として捉えられる場合も少なくありません。これらの症状は医学的な面から見ても判断が難しい部分もあるので詳しい検査が必要でもあります。自覚症状がなかったとしても、まずは病院で診察を受けて、体の具合に変化を感じたときには医師にきちんと伝えましょう。

 

通院しないと慰謝料・治療費の請求ができない可能性も

「大したケガではないから」といって病院に行かないでいると、人身事故ではなく物損事故として処理されてしまうおそれもあります。「通院しない=ケガをしていない」と判断されてしまえば、後から症状が現れても交通事故との因果関係が証明しづらくなってしまいます。物損事故になると慰謝料や治療費の請求ができない可能性があるので大きな損を被ることになりかねません。あとから痛みが出ても病院にかかる治療費は自腹で支払うことになるため事故にあった早い段階で通院するようにしましょう。

 

病院を探す・変更するには?

交通事故のケガで多い症状と対応する医科についてまとめました。

頭部:事故時に頭部を打ち吐き気やめまいなどが生じたなど→脳神経外科

視覚:事故によって急激に視力が衰えたなど目の異常が見られたなど→眼科

頭部以外(頭部より下の部位):打撲・骨折・むちうちなど頭部以外の箇所に自覚症状がみられたなど→整形外科

その他:自覚症状がない、どの医院に通えば良いかわからない→整形外科(その後の処置も含めると総合病院の整形外科)

また「通うのがしんどい」「医師に相談しにくい」など何らかの理由で病院を変更したいときには転院も可能です。その場合には担当医師から紹介状をもらって転院先の医師に自覚症状などをしっかりと伝えましょう。特に後遺障害診断書には以前の入通院歴が記載されないこともあるため、担当医師とのコミュニケーションが大切だといえます。

 

治療に健康保険は使える!領収書はきちんと保管しよう

交通事故でケガをしたときには治療のために健康保険が適用されます。加害者側から治療費が出たとしても途中で打ち切られる可能性もあるので健康保険の利用を念頭においておきましょう。また病院で治療をした領収書だけでなく、通院のためにかかった交通費なども請求できます。領収書もきちんと保管しておくことが大切です。後からまとめて加害者に請求できるので、ケガの治療に関係している領収書は捨ててしまわないようにしましょう。バスなどを利用して領収書が発行されない場合にはかかった料金や日付などをメモに残しておくと安心です。

交通事故でケガを負ってしまったときに、治療費の支払いを誰がするのかを押さえておく必要があります。また入通院慰謝料の請求には通院期間・通院頻度も関係しており、後遺障害診断書の作成にも影響します。慰謝料以外にも加害者側に請求できる損害賠償はたくさんあるので、どのようなものが該当するのかを把握しておきましょう。

 

治療費は基本的に相手方の保険会社が負担する

治療費の支払いは加害者が加入している保険によって主に以下の3通りが挙げられます。

・加害者本人または加害者が加入している任意保険

加害者や保険会社から病院に対して直接的に治療費が支払われるので被害者が立て替える必要はありません。病院に交通事故の被害者であることを伝えて保険会社に請求してもらうように相談をしましょう。

・加害者が加入している自賠責保険

保険会社が治療費の支払いに応じてくれなかったり、そもそも加害者が任意保険に加入していなかったりするケースもあります。その場合には自賠責保険を利用して病院に治療費を支払ってもらうことになります。この場合は多くが被害者が一時的に治療費を立て替えて治療が完了(もしくは症状固定時)した後示談交渉するときに請求します。

・被害者が加入している任意保険

被害者が加入している「人身傷害保険」を利用して治療費を支払う方法もあります。被害者側が治療費を払うのは理不尽に思えるかもしれません。しかし人身傷害保険は過失割合に関係なく補償がなされます。そのため自身の過失割合が大きいケースでは利用するメリットがあります。また治療を継続していても相手方の保険会社から「治療費の打ち切り」や「症状固定を勧められる」といった問題が起こる場合もあります。症状固定となってしまうと、後遺症が残る場合を除いては治療費が請求できなくなってしまう点も押さえておきましょう。慰謝料などの損害賠償請求にも影響するため、完治もしくは医師による症状固定の診断が済むまでは治療を継続したほうがよいといえます。

 

通院期間と慰謝料の関係

病院にどれくらいの期間通ったかを示す通院期間は入通院慰謝料の金額に影響を与えます。通院期間が長いほど金額が大きくなる傾向にあるので、完治もしくは症状固定となるまできちんと通いましょう。また通院頻度についても適切な回数を医師と相談して決めることが大切です。通院頻度が少ないと加害者側の保険会社から「ケガが完治している」とみなされる可能性があり、治療費の打ち切りや慰謝料の減額を求められる可能性があります。納得できる入通院慰謝料を得るためには週に2~3回の割合で通うことになります。通院を途中で止めてしまったり期間が空いたりしてしまうと、ケガの程度が軽いと判断されることもあるので注意が必要です。特に後遺障害診断書の内容にも影響を及ぼすので、医師の指示に従って治療を継続することを心がけましょう。

 

その他の損害賠償請求

入通院慰謝料や治療費以外にも加害者側に対してさまざまな損害賠償が行える可能性もあります。休業補償や病院までの交通費をはじめとして、後遺障害と認定されれば逸失利益(将来得られるはずだった収入)なども請求できます。どんなものが損害賠償として盛り込めるのか詳しく知りたいときには、交通事故問題を専門とする弁護士に相談をしてみるのも1つの方法です。経験が豊富な弁護士であればいろいろなケースに対応できるので心強い味方となってくれるはずです。

 

2.治療期間はいつまで?

治療期間は担当医師が決める

 たとえばむちうちの治療期間の目安は3ケ月程度といわれていますがこのタイミングで保険会社から連絡がくることがあります。治療期間は個人差があるため、継続しして治療が必要なときには客観的な証拠をもとに保険会社とやりとりを重ねていく必要があるのです。

 

複数の病院に通っても問題はない?

治療の質を上げるために複数の病院に通うこと自体は問題がありません。医師の診断に納得できないときはセカンドオピニオンを求めることも重要です。ただ後遺障害認定の手続きを行うときには「症状の一貫性」が問われるのでそれぞれの担当医師に自覚症状をきちんと伝えましょう。また通院する病院が多いほど領収書の保管や計算もややこしくなりがちなので工夫することも大切です。

 

整骨院接骨院などに通っても問題ない?

ケガの治療を効果的に行うために整骨院接骨院に通うのは問題ありません。気をつけておきたいのは、整骨院接骨院、整体院などは病院ではない点です。整骨院接骨院の先生は厳密には「柔道整復師」であり医師免許をもっていません。医療行為つまり診断や検査、治療や予防をおこなえるのは医師のみです。もちろんマッサージ療法などで痛みを和らげるのも立派な治療ですが医師の指示や同意がなければ治療費を損害賠償請求できない危険があります。まずは医師の診断を受けた上で「整骨院に通いたい」旨を医師に伝えてから通うようにしましょう。担当医師に相談をしたうえできちんと許可をもらってから通院しましょう。

 

病院や保険会社と揉めてしまったら弁護士に相談

 交通事故の被害者となってケガの治療を進めていく中では、治療費のことで相手方の保険会社とのやりとりに苦労をしてしまう場合もあります。