ケンケンラボ

現役病院薬剤師が身近な病気や感染症、薬、健康食品、日常生活の中で疑問に思った事や勉強した事の中で役立つ情報を発信していくブログです。

知っておきたいクスリのリスクと正しい使い方

病気やケガの治療などで大切な役割を果たす「薬」。しかし程度に差はありますが薬は効き目(効能・効果)だけではなく、副作用という「リスク」も併せ持っています。重い症状では死に至ることも。そこで薬を安心して使うためには薬に関するリスク、正しい使い方や保管方法を知ることが大切です。そして薬の服用歴が分かる「お薬手帳」や薬について身近に相談できる「かかりつけ薬剤師・薬局」を持つことも有効です。今回は知っておきたい薬の基本的な知識を紹介します。

 

目次

  1. 知っていますか?クスリのリスク
  2. 薬にはどんな種類があるの?
  3. 薬の正しい使い方とは?
  4. 薬をより安全に使うには?
  5. 薬について安心して気軽に相談したい!

 

1.知っていますか?クスリのリスク

薬は病気やけがを治療するなどの効果・効能がある一方副作用というリスクも併せ持つものです。副作用とは本来の目的と別の作用のことで、例えば眠気やのどの渇きといった軽いものから、肝機能障害やアレルギー反応の一種であるアナフィラキシー(※)などの重い症状まで様々です。

ただし薬を使用すると必ず副作用が現れるものではありません。もし現れたとしてもその症状は服用した人や薬によって異なりますが次に当てはまる人は特に注意が必要です。

 

アナフィラキシー:アレルギー反応の一種。皮膚のかゆみやじんましんなどから始まり、ひどくなると呼吸困難ひいては生死に関わるほどの重症(いわゆるアナフィラキシーショック)になることもあります。

 

薬の副作用について特に注意が必要な人

・アレルギーのある人

・過去にひどい副作用を経験したことがある人

・医師の治療を受けている人

・肝臓・腎臓など薬の成分を代謝・排泄する臓器に疾患のある人

・他にも薬を飲んでいる人

・妊娠している女性、妊娠の可能性のある女性、授乳中の女性

・高齢者

また「高所作業や乗り物または機械類の運転操作をする人」は眠気等の副作用に注意が必要です。

薬の使用中に何か異常を感じたらすぐに医師や薬剤師に相談してください。その際には「何という名前の薬をどのくらいの量、期間使用し、どのような症状がでたか」を説明できるようにすることが大切です。

 

2.薬にはどんな種類があるの?

薬は「医療用医薬品」、「要指導医薬品」、「一般用医薬品」の大きく3つに分類されます。

「医療用医薬品」は医師の処方に基づいて使用する薬で、「要指導医薬品」「一般用医薬品」は、薬剤師等による情報提供を踏まえて、症状にあわせて薬局等で購入する薬です。

「要指導医薬品」は医療用医薬品から市販薬に変更となってからの期間が比較的短いものなどが該当します。「一般用医薬品」はリスクに応じて第1類から第3類までの3種類に分けられます。

 

3.薬の正しい使い方とは?

薬を使用する際には次のような点への注意が必要です。

(1)使用前に説明文書をよく読む

医療用医薬品・要指導医薬品・一般用医薬品には必ず説明文書がついています。用法・用量や効能・効果のほか、使用上の注意や副作用に関することが記載されているので、使用前には必ず目を通す習慣をつけましょう。また捨てずに保管し、必要なときにはすぐに読めるようにしておくことも大切です。

 

(2)用法・用量、タイミングを正しく守る

飲み薬は決められた量よりも多く飲めばさらによく効くというものではなく、逆に副作用や中毒などが現れる危険もあります。薬を飲むタイミングについても同様です。特に高齢の方や妊娠中・授乳中の方、赤ちゃんなどの場合は薬の種類や使用する用法・用量に注意する必要があります。

 

Q 薬を飲むタイミングって?

A 用法の指示のうち「食前」「食後」「食間」とは次のタイミングをいいます。

「食前」:食事の1時間~30分前(胃の中に食べ物が入っていないとき)

「食後」:食後30分以内(胃の中に食べ物が入っているとき)

「食間」:食事の2時間後が目安(食事と食事の間)※食事中の服用ではない

 

Q もし薬を飲み忘れたら?

A 気づいた時にすぐに飲みましょう。

ただし次の服用時間が迫っている場合は1回分を抜いてその次からいつものように飲みます。決して2回分を一度に使用してはいけません。

なお薬の種類によっては飲み忘れたときの対応が異なる場合があります。

 

Q 医師に処方してもらった薬(医療用医薬品)を他人に譲ってもいいですか?

A その人の症状や体質・年齢などを考慮して処方されているため、仮に症状が似ていたとしても他人が使ってはいけません。また要指導医薬品、一般用医薬品についても薬剤師や登録販売者に相談して、必要な薬を選ぶことが大切です。安易に他の人にあげたり、もらった薬を服用することはやめましょう。

 

Q 薬を飲むときの水の量は?

A コップ1杯の水(またはぬるま湯)が目安です。

少量だと薬がのどや食道などにはりついて炎症や潰瘍をおこすおそれがあります。なお医師から水分摂取の制限を指示されている場合はその指示に従ってください。

 

(3)薬の形状(錠剤・カプセルなど)に注意

治療効果の向上や副作用防止のため、錠剤や粉薬、カプセル、シロップといった様々な形状に工夫されています。形状によっては使い方に注意しましょう。

 

錠剤、カプセル

 これらの中には薬に含まれる有効成分が少しずつ溶け出す、あるいは胃ではなく腸で溶けて効くように工夫された薬もあります。そのためむやみに噛んだりつぶしたりまたはカプセルをはずしたりしてはいけません。

 

目薬

容器の先に目やまつ毛が触れないようにしましょう。また2種類使用する場合は少なくとも5分程度の間隔を空けましょう。

 

(4)薬の飲み合わせ

複数の薬を使用している場合飲み合わせが悪いと十分な効果が得られなかったり、逆に効き過ぎて体に悪影響を及ぼしたりすることがあります。また食品やサプリメントの中にも薬との飲み合わせが悪いものもあります。

 

一緒に飲むことを避けたほうがよい組み合わせ

「ワルファリン(血を固まりにくくする薬)」と「納豆」または「クロレラ食品」

「カルシウム拮抗薬(高血圧の薬の一種)」と「グレープフルーツジュース

「風邪薬」と「アルコール」

「眠気防止薬」と「カフェインを含む飲料(コーヒーやいわゆるエナジードリンクなど)」

 

薬の正しい保管方法

(1)子どもの手の届かないところ

子どもの誤飲を防ぐために子どものすぐ手の届く場所に薬を放置しないようにしましょう。薬を廃棄する際にも子どもの目に触れないように処分しましょう。

 

(2)湿気、日光、高温を避ける

薬は湿気・光・熱によって影響を受けやすいため、直射日光の当たらない高温にならない場所で保管しましょう。また冷蔵庫で保存するよう指示された薬は凍らせないように気をつけましょう。

 

(3)薬以外のものと区別

誤用を避けるため食品・農薬・殺虫剤・防虫剤などと一緒に保管するのは絶対やめましょう。

 

(4)他の容器に入れ替えない

薬の種類や使い方が分からなくなり誤使用によって事故を招くおそれがあるため薬を他の容器に入れ替えての保管は避けましょう。

 

(5)古い薬は廃棄

時間が経過した薬は分解・あるいは成分の変質によって本来の効果が得られなくなる場合があります。そのため使用期限を過ぎている、または見た目に異常がある薬の使用はやめましょう。

 

4.薬をより安全に使うには?

 自分が使っている薬の記録をつけておくための「お薬手帳」をおすすめします。

これによって普段使用している薬や薬に関する情報を正しく知ることで副作用や誤飲の防止などにつながる、薬によるアレルギー経験なども医師や薬剤師へ正確に伝えられるというメリットがあります。

 

お薬手帳」に記載する主な項目

・氏名、性別、生年月日、血液型、住所、電話番号、緊急連絡先

・アレルギー・副作用歴の有無、過去の病歴、かかりつけ医・薬剤師など

・服用薬に関する情報、処方された薬の名前、用法・用量・期間など

 

お薬手帳」の利用方法

医療機関や薬局に行った際には毎回必ず医師・薬剤師に提出

・薬剤師が薬の情報(名前・飲み方・注意点など)を記入、または渡された説明文書などを自分で貼付

・(必要に応じて)処方された薬に関して不明な点や気づいたこと、服用後に気分が悪くなったことなどを自分で空欄などに記入

 

5.薬について安心して気軽に相談したい!

医師が発行した処方せんはどこの薬局でも取り扱ってくれます。しかし受診する医療機関によって薬局を変えるのではなく、“かかりつけ”の薬剤師・薬局を持つことをお勧めします。

より安全で効果的な医療を提供することを目的として、医師(処方せん発行)と薬剤師(調剤)がそれぞれ独立した専門的な立場で患者さんと接する仕組みを「医薬分業」といいます。医薬分業には次のようなメリットがあります。

医薬分業の主なメリット

・複数の医療機関から処方せんをもらっても(1か所の薬局で調剤を受けることで)飲み合わせの悪い薬や同じような薬が重複して出されていないかなどをチェックしてもらうことができる。

・処方せんが発行されることで患者自身が処方の内容を把握可能になる

・薬剤師による情報提供や服薬指導を受けることができ飲み忘れや飲み残しを防ぐことができる。

・在宅での療養が必要になっても薬の管理説明を受けられる。

ジェネリック医薬品について説明してもらえてジェネリック医薬品を選択するか希望を聞いてもらえる。